ござる介護ニュース)まだまだ深刻な認知症の行方不明者ですが
認知症1万7千人行方不明 過去最多、8年で1.83倍
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc76f2ad7e5b662342234ec04df326f1009bd37d
このブログでは何度か書いていると思うのですが、介護サービスを利用している認知症の方は、それほどひどい症状にならないと思います。
それどころか症状はかなり安定すると思いますし、だから介護の教科書に載るような症状が出ないというか、かなり誇張して書くなら
物忘れの激しい高齢者
ってレベルに落ち着くのではないかと思っています。
私が介護員時代だった頃、「認知症で程度がひどい」という方が施設にやってきました。どの程度ひどいのかはわかりませんでしたが、接していて思いました。
確かにひどいといえばひどいけど、別にそれほどでもないなぁ
どういうことかというと、同じ話を何度も繰り返すという意味ではひどいけど、周辺症状としてはひどいものが何もないなぁということです。
実はこの方を通した体験がこのブログを作るきっかけにもなったし、ブログに登場する「ルミ子さん」のキャラの参考の一人にもなっているのですが、その方を通して学んだことは
認知症の方は一人にしてはいけない
ということでした。
認知症の方は、その多くが「独自の世界」を持っていて、その世界観で生きています。同じことを本当に壊れたレコードのように何度も何度も何度も何度も繰り返す。毎日毎日もう本当に毎日延々と続くのです。狭い世界を表現しているだからだと私は思います。狭い世界を伝えようとしたら、そりゃあ同じことを何度も繰り返すことになりますよね。狭い世界だもん。言うことなんてあっという間になくなる。けど、それでも伝えたいのです。
なので、認知症の方と接するには、まずはその狭い世界を知って、丸ごと肯定するしかありません。そうしたら、確かに同じことを延々と繰り返しますが、同時に信頼関係も生まれます。介護のプロはこの「同じことを延々と嫌な顔をせずに聞き続けること」ができるからプロなのです。
家族だとこうはいきません。
何言ってんの!
また同じこと言ってぇ
わーもう聞きたくないー
基本的には徘徊や暴力などの症状は「否定」とか「拒絶」などから出てくるんじゃないかと、私は経験から実感しています。認めているうちは症状は出ないからです。けど、例えば家事などで忙しい時に何度も何度もばあちゃんから同じこと言われたら、瞬間的にカッとなるのは仕方ありませんよね。ご飯食べたのに「まだ食べてないよ」とか言われたらカッとなりますよね!嫁はご飯も食べさせてくれない!なんて言われたら呪いたくなりませんか?そんな思いまでしてさらなる追い討ちで「それが徘徊の引き金」なんて言われたらたまったものではありませんよね。
けど、実はそれが引き金だったりするのです。
なんてことだ。
そのための介護サービスなのです。
一人暮らしの高齢者が認知症である場合、徘徊を止める人は誰もいません。それどころか全ての行動に制約がないので、言い方はアレですが、やりたい放題です。だから「誰かに迷惑がかかるまでは」誰も何も知らないことが多い。
これに関しては一人で解決などできるわけがありません。まさに「地域の連携」ってことになります。
ところで、これは私の持論なので賛否あると思うのですが、GPSのことがよく言われます。徘徊してもわかるようにつければいいとか。
個人的にはその前にまずは介護サービスを受けさせる方が先ではないかと思います。徘徊の原因の多くは「孤立」じゃないかと私は思うのです。懐かしい我が家に帰りたいとか仕事に戻りたいとか、徘徊の原因についてはそういう風に言われることが多いのですが、そもそも孤立感がなかれば、案外本人も忘れているのではないでしょうか?元々自分の狭い世界に生きているだから、周囲から孤立したらすぐにその狭い世界に閉じこもってしまうのです。
認知症の方は、例えばレクが終わった時とか、食事してひと段落した時とか、何かの節目にフロアをぶらっと出て行こうとすることが多い。言い換えるなら、何かすることがあれば、自分の世界に戻る暇がなければ、徘徊しない。それに、例えば介護員が一緒に付き添って懐かしの我が家に行くだけなら、徘徊ではありませんしね。外出レクの際に、懐かしの我が家の近くを走るなんてこと(もちろんその前には十分検討して)もあります。
懐かしー
なんてニコニコして本当にいい笑顔になりますよ。そういうことを積み重ねていけば、信頼関係さえ作り上げれば、徘徊などなくなっていきます。
それにデイサービスなら同じ世代の仲間がいます。家族の言うことは聞けないけど、仲間の言うことは聞く。案外多いですよ。
そもそも、GPSは「一人にしておいても大丈夫」と言う発想。
そうではなくて「認知症患者は一人にしない」発想が大事じゃないかなぁと私は思います。
だからこそ介護サービスを利用して、ちょっとだけ世界を広げることが大事じゃないかな。