かってに介護Q&A)認知症の人って本当に同じ話ばかりするの?
A)人によりますが、本当です
今回のかってに介護Q&Aは認知症の話です。
皆様は「認知症」って聞くとどういうイメージを思い浮かべますか?
言葉が悪くても構いませんよ。人間素直が一番です!というわけで、認知症の素直なイメージとしては「ボケてる」というのが最も多いのではないでしょうか?
今はそういうことを言うとなんとかハラスメント的な規制を勝手にしたがる人が多いかと思うのですが、それだと「状態を正しく表現できない」のではないかと実は思っています。相手を馬鹿にするのではないのだし、言葉を規制すればするほど「実態」とは程遠いところにいってしまうのです。かくいう私、実は介護の仕事に着く前には「痴呆症」って言われてたことからも「認知症=ボケてる」ってイメージを持ってました。
じゃあボケてるというのは「何をもってボケてると言うのか」ってことですが、やっぱり
何回も同じ話をする
少し前のことも忘れてしまう
突然どこかへ行こうとする
というような感じじゃないでしょうか?
さっき話したことなのにまたその話?
さっき返事したじゃない!わかってないの?
どこ行くの?外は雪で寒いのよ!
とか、それなりに言うなら意思疎通ができてない状態、これを称して認知症というのはボケてるのだと。
さて、介護の職に就いて色々な認知症の方と接して来たのですが、その経験から言うと、同じ話を繰り返すというのはこれはもう本当に当たり前のことでした。冗談抜きに5分おきに同じ話を延々繰り返す人もいます。しかも「本当に今初めて話す」風に話すんですよ。新鮮そのもの、あなただけに今初めて話すのよという感じで。
内容で最も多いのは自分の昔話。過去の自分の人生は本当に鮮明に覚えていて、生き生きと話すのです。自分の人生の中で活躍してきたこと、仕事や子育てのことをもう本当に生き生きと話してくれるのです。でも、悲しいかな、話した尻から本当に忘れていってしまうのです。仮に「その話はさっき聞きましたよ」なんて言ったとしても、本人はポカーンとして、
あんた、誰からその話聞いたの?
と不審そうな目つきになって表情がみるみる曇って、大変なことになったりします。だから、介護員は基本的には
さも初めて聞くような対応
を取って、本人の話を遮らないようにしています。ご家族さんはこの「壊れたテープレコーダー」に心身ともに疲れて果てることが多いそうなのですが、介護員はそのあたりは訓練とか経験などでカバーできます。だから辛い時には介護サービスを頼って欲しいです。あと、案外これは参考書などには書かれていないと思うのですが、厳密には本当に同じ話ばかりをするのではなく、職員の「慣れ具合」によっては話が変わることも多いです。つまり「誰に話しているのか」「その人は自分にとっていい人なのかどうか」は理解しているのです。
認知症といっても、やっぱりそこは人なのです。だから「何にも分からないボケてる人」だというような決めつけはNGなのですね。
さて、認知症のもう一つのイメージである徘徊。
施設などに見学に行くと、よくあちこちの廊下をぶらぶらしている人を見かけたりします。また、多くの施設は、出入り口が勝手に開かない仕様になっています。キーロックで厳重に管理されているところもあります。
私も本当によく見ました。本人に話を聞くと
男性)会社に行きたかった
女性)家の様子が心配
という感じが多かったです。ただただぶらぶらしているのではなく、ちゃんと目的があるのですね。不思議なもので、認知症の方は職場や家は覚えていても、そこに至る道が分からない。だからどうしてもぶらぶらしているように見えるのです。本人は「職場や家に行こうとしている」だけなのに。
この徘徊にはちょっとアレンジがかかることもあって
毎日夕方になると(どこかに)帰りたくなる
というパターンもあります。午前中は穏やかなのに、昼食を食べると
私帰らなきゃ!
と言い出して帰る準備をして出て行こうとするのです。毎回毎回本当に同じパターンの繰り返し。ものすごい力で職員を振り切ったりするのだから相当なものです。
職員は職員で慣れたもので、
もう少しで迎えがきますよ
今日はもう遅いから明日にしませんか
今ちょうど〇〇さんに見て欲しいものがあるんですよ
などと注意を逸らして、どこかへ行きたいということそのものを忘れさせるような声かけをしたります。もちろん声かけがどうしてもうまくいかないこともあって、その場合には一悶着とか大暴れとかいったケースもありますし、場合によっては知らない間に施設を抜け出して警察に連絡といったことを経験している施設もあるはず。
この徘徊で毎年多くの方が亡くなっているので、本当に侮れません。だからこその施錠なのです。
認知症はメディアの報道などで、とても怖いイメージを持たれている方も多いと思います。実際には確かにすごい例もあって、実はこのブログの漫画に登場するルミ子さんは、そんなすごい認知症の例だったりします。けど、一方では、その人の「元々もってる本来の性質」が出てくるんじゃないかなとも思っていて、
とても明るく元気な方
もたくさんいます。「おら、なーんにもわかんね(笑)」などとあっけらかんと話したりするのです。そして多くの認知症の方は自分を認知症だと思ってない。ただ物忘れがひどい程度だと思っているのです。
簡単に例えるなら、コップの中に知識や経験という名の水がたっぷり溜まっていて、けどちょっとでも新しい水をそそぐと溢れてしまって新しい水はこぼれてしまう。最初から溜まっている水はそのまんま。という感じじゃないでしょうか。だからこそ病気なのです。新しい知識や経験が貯まらない病気なのです。
このブログでは何度も書いてる気がしますが、介護サービスを受けると、認知症の方の症状は改善はしませんが、悪化のスピードは確実に遅くなると思います。私は、参考書に書いてあるようなひどい認知症の例はここ数年以上、見たことがありません。
技術の進歩なのではないかと思います。
病気は仕方ありません。あとはどうやってその病気と付き合うか、ですよね。私としては
抱え込まないでプロに任せて
っていう気持ちです。